当社製品利用上の注意点
当社磁石製品の扱い方
当社製品に組み込まれている磁石で、永久磁石(特にネオジム磁石等)は大変強力です。
不用意に他の磁石や工具、鉄片などを近づけると、指や手を挟まれて思わぬ怪我をすることがあります。
取扱には十分注意して下さい。
また、心臓用ペースメーカー装着の方は、本製品に近づかないで下さい。
永久磁石や電磁石に近づけてはいけないもの
以下に挙げるものを近づけると磁化されて、記録された内容が壊れたり、使えなくなるなど
故障の原因になります。
・クレジットカードやキャッシュカードなどの磁気カード(最近は社員証も磁気データが書き込まれています)
・アナログ式の時計(歯車が磁化します)
・フロッピーディスクなどの磁性記録媒体
・メモリーカード(SDカード、USBメモリ等)
・パソコンなどの精密機械
磁石を利用するのに必要な知識について
吸着力
磁石本体が、密着して吸着している場合、引き離すのに必要な力を吸着力といいます。
単位はキログラム(kgf)、グラム(gf)としています。
マグネット応用機器の吸着力の強さは、表面磁束密度と吸着面積との組み合わせによります。
吸着力の設定はワークに合わせた吸着面積(作用面)が重要なポイントで、相手方の板厚、材質、
吸着面の状態、ギャップによって変化します。
例えば永久磁石を鉄片に近づけるとします。永久磁石の表面がN極側とすると、相手の鉄片はS極になります。
相手を磁石にしてくっつけているわけです。
鉄片は磁石になりきっているわけですが、当然磁石になりきれる量は決まっているので
それ以上強い磁石をもってきても飽和状態となります。
ギャップの管理も重要です。磁石と対象物との間にギャップがあると、極端に弱くなります。
距離の2条で変化します。
材質によっても吸着力は変化します。SS400を100%の吸着力だとすると、S45Cでは80%程度に低下します。
なお電磁石の場合は、コイルの発熱がありますので、冷えた状態では吸着力が強く、
長い間通電して熱くなった状態では吸着力が弱くなります。
吸着力(丸棒磁石を図の様に段々曲げていく)
吸引力
吸着するものを、遠方より引っ張って磁石に吸着させる場合を、吸引力といいます。
吸引力が強いからといって、吸着力も強いとは限りません。
単位はミリメートル(o)としています。
吸着力と吸引力のテスト方法
吸着力の測定
吸着力や吸引力を計算式で算出することは、大変困難なものです。
そこで、実際のものと同等の物を用意し、実際のワークでのテストが非常に重要となります。
弊社では各種板厚のテスト鉄板を準備し、用途に合わせて測定しています。以下に一般的な測定方法をご説明いたします。
吸着力のテスト方法:固定したマグネットにワークを吸着させて、
プッシュプルスケールなどで引っ張り、マグネットからワークが離れた重量値を読みます。
吸引力のテスト方法:固定したマグネットにワークを徐々に近づけていき、
ワークがマグネットに吸引された距離を読みます。
なお吸着力・吸引力とも値は目安であり、保証値ではありません。
ヨーク(継鉄)
ヨーク(継鉄)とは磁石が持つ吸着力を増幅する軟鉄のことで、磁気回路を構成するための軟鉄版を総称してヨークといいます。
ヨークは磁極を近づける作用を持っているので、磁気回路の一部として使え、磁力線の経路を制御する重要なものです。
材料は、透磁率や残留磁気特性などの電磁気的特性の良いものが要求されるが、安価で入手性の良い鉄材(SS400)が使用されることが多いです。
ヨークの使用例
例えば、2個の磁石とヨークを使用した場合の、吸着力と吸引力の関係はおおよそ次のようになります。

右端の図のように、磁石単体の状態ではN極からS極に360度全周に渡って磁力線があります。 そこで中央の図のように、磁石の両端にヨークを吸着させると、全周をまわっていた磁力線は ヨークの端に磁力が集中します。左端の図は、ヨークをさらに1枚加えた状態です。 このように、磁力線の流れを変えることがヨークの役割なのです。
このように、ヨークを使えばその磁石の持っているN極とS極を近づけたり遠ざけたり、 磁力を出す方向を変えるように組み合わせ、吸着力あるいは吸引力を増大させるように応用できるのです。
短絡
磁石の持っている磁力線は、N極からS極にある一定の放物線を描いています。 この磁力線を鉄板などによって妨げると、磁石の能力は極端に低下します。 磁石の能力を最大限に発揮させるためには、磁力線の短絡に注意しなければなりません。
磁力線
磁力がN極からS極に向かってどのように出ているかを描いた線のことで、普通は目に見えません。 コンパスを使うと磁力線の向き、砂鉄などを利用すると磁力線が出ている様子を見ることが出来ます。
磁界
磁力の影響が及んでいる空間のことで磁場ともいいます。 遠くのものを引き寄せたいときには、磁界も遠くまで及ぶ必要があります。
一般的な棒磁石の磁力線と磁界
弊社では長年のノウハウにより、N極S極をうまく組み合わせて、磁界の範囲をコントロールしています。
なお、マグネット応用機器を並べて使用する場合は、お互いの磁界に影響が出ないように
間隔や配列などを工夫する必要もでてきます。
表面磁束密度
表面磁束密度(ガウス/テスラ)とは、ある一定の範囲にどれだけの磁束があるかを表す単位です。
(ガウス:1平方センチメートル / テスラ:1平方メートル)
磁束とは磁力線の束のことで、磁束密度とは単位面積当たりの磁界の強さを表します。
この値が大きいほど磁力が強くなりますが、マグネット応用機器の場合、
磁束密度が高い=(イコール)性能が高いとは言い切れません。
・T(テスラ):国際単位系(SI単位系)
・G(ガウス):センチメートル・グラム・秒単位系(CGS単位系)
表面磁束密度の測定
単体マグネットの磁束密度はマグネット作用面の表面で測定します。
装置として測定する場合は、機能を果たす箇所での測定が重要になります。
測定はテスラメーター(ガウスメーター)を用いて行います。
測定する個所によっては異なる結果を得ることもあるので、測定個所の位置やギャップなどを
明記する必要があります。
磁束密度の単位、ガウスとテスラ
磁気の単位においてSI単位系「テスラ」では通常使用する値に対して大きすぎる為、CGS単位系「ガウス」を用いる事が多々あります。
弊社では便宜上CGS単位系「ガウス」を標準としております。
単位早見表 | ||
G(ガウス) | T(テスラ) | |
0.01G | 1μT | 0.000001T |
0.1G | 10μT | 0.00001T |
1G | 100μT | 0.0001T |
10G | 1mT | 0.001T |
100G | 10mT | 0.01T |
1000G | 100mT | 0.1T |
10000G | 1000mT | 1T |
保磁力(Hc)
この値が大きいほど磁力がぬけにくく、小さいほど減磁しやすくなります。
(単位:A/m、Oe(エルステッド))
最大エネルギー積 (BH)max.
残留磁束密度(Br)と保磁力(Hc)の積で、BrとHcおよびこの(BH) max.が大きいほど、
安定した良い磁石と言えます。
(単位:kJ/m3、MGOe)
キュリー点(℃)
磁石の残留磁束密度が0になる温度です。キュリー温度とも呼ばれます。
磁石の温度が上昇するに伴い、それぞれの磁区内での磁化は減少していき、キュリー温度以上では残留磁束密度が0になります。いわゆる脱磁状態になります。
キュリー点は磁石の種類によって異なり、フェライト磁石の場合、約460℃がキュリー点になります。
注意しなければならないのは、キュリー点まで磁石として使えるわけではなく、実使用温度はもっと低いということです。
実使用温度はフライト磁石で約90℃近辺となります。それ以上は減少幅が大きくなり、キュリー点で磁束密度が0になります。
また、キュリー点に達して磁力を失った物質を、再び常温に戻しても(温度をいくら下げても)磁力が復活することはありません。
フランスの物理学者 ピエール・キュリー(Pierre Curie)が発見したことから「キュリー点」となりました。
磁石の種類とキュリー点
磁石は材質によって違った性質を持ち、同じ種類の磁石でもグレードによって異なります。 ここでは代表的な磁石の使用限界温度をご紹介します。
磁石の種類 | キュリー点 | 使用限界温度 |
フェライト磁石 | 460 | 90※1 |
ネオジム磁石 | 310 | 80 |
ネオジム磁石(耐熱) | 400 | 200※2 |
サマリウムコバルト磁石 | 750 | 300 |
アルニコ磁石 | 860 | 450 |
※1低温域での減磁についても注意が必要
※2磁石の厚みが薄い場合は別途考慮が必要
表の数値はあくまでも目安であり、これらの数値を保証するものではございません。
透磁率(μ)
透磁率とは、磁石の磁化の様子を表す物質定数のことで、磁束密度と磁場の強さとの比になります。
つまり磁石の磁気的性質を表す尺度が、透磁率ということになります。
「物質への磁束の通りやすさ」のほうがピンとくるかもしれません。
わかりやすい物質が「鉄」です。「鉄」という物質は、非常に磁化しやすい物質です。
(磁石に引き寄せられる物質のことを強磁性体といいます)
強磁性体は磁化しやすいので、透磁率の値も高くなります。
このように、透磁率の値が高いほど磁気抵抗が小さく磁化しやすくなります。
磁化しやすい反面、減磁もしやすくなります。つまり磁力が残りにくい、磁力が抜けやすい、ということです。
逆に透磁率が低いほど磁化しにくく、減磁しにくくなります。
磁化しにくければしにくいほど、透磁率の値は低くなっていくというわけです。
特にパーマロイ(Permalloy)は、初透磁率の大きいことを目的に作られた鉄・ニッケル(Fe-Ni)の合金です。